「わたしは結構な心配性なんだよね。それがよくわかっているから、不安になりそうなことはできるだけ考えないように意識しているんよね。だけどどうも、そう意識すればするほど余計に不安になる気がする、、、おかしいな、、、。」
ふむ、まあそうだろうな。
意識すまいとすればするほど、意識してしまうのが人間ってものや。
オニギリス!
脱マンネリストのおにぎりです。
今回もよろしゅう!!
今回の話題は「「思考抑制の皮肉効果」考えないようにするからこそ考えてしまうのさ」という話です。
今回は以下のような方に向けておおくりします。
不安を意識しないようにと意識するほど不安になる理由を知りたい人
おそらく誰にでも思い出したくない事や、考えると不安になるから考えたくない事というのが一つくらいはあると思います。
心配性の人ならなおの事でしょう。
しかし、「不安になるから考えまい」とすればするほどに余計にその「不安になること」が頭から離れなくなったりするという事があるんですよねえ、これが。
以前の記事で何でも言っている通り、不安から目を背けようとするとかえって不安になってしまうんです。
今回はなんでそんなことが起こるのかについて少し詳しく見ていきましょう。
では、ゆるりとおおくりします。
目次
意識しない様にすればするほど強く意識してしまう矛盾
ある物事について意識しないように意識しないようにと考えることで、かえって強く意識してしまうという現象のことを、「思考抑制の皮肉効果」とか「リバウンド効果」、「シロクマ効果」等といいます。
常識的に考えるなら、「考えないぞ」と意識すれば、「考えたくない事」を意識から遠ざけられそうなのに実に不思議ですねえ。
実は、この一見不思議な現象を説明する理論に「皮肉過程理論」というものがあります。
皮肉過程理論とは、1987年に「何かを考えないように努力するほどにかえってその事が頭から離れなくなる」という現象を説明すべくダニエル=ウェグナーさんにより提唱された理論です。
この理論では、人間の思考過程を以下の二つに分けて考えています。
実行過程:実際に思考を行う過程。特に思考を制御したいと思っていない場合に主として使う過程である。
監視過程:自分の思考を制御したいと思う時に働く過程。その制御したい内容に反していないかを監視する過程である。
この理論に沿って考えるなら人が何かを思い出したくないと考える時、監視過程で「その思い出したくない事を考えているか」を監視するために実行過程において「その思い出したくない事」について考える必要が生じてしまいます。
さらに厄介なことに、「思い出したくない事」を考えないようにすればするほど、日常生活の中において「思い出したくない事」を考える事につながるものをチェックする事になってしまい結果的に高頻度で「思い出したくない事」を思い出してしまうことになるのです。
んー、何ともややこしい話ですねえ、、、。
ちなみに、この理論を検証するためにウェグナーさんは「シロクマ実験」と呼ばれるものを行っています。
その概要は以下。
「実験概要」
・A・B・Cの3つの実験参加者グループを用意
・すべてのグループにシロクマの1日を追った同じ映像を見せる。
・Aグループ参加者にシロクマの事を覚えておくよう指示
・Bグループ参加者にシロクマの事を考えても考えなくてもいいと指示
・Cグループ参加者にシロクマの事だけは絶対に考えないようにと指示
・一定時間経過後、実験協力者に映像について覚えているか尋ねる。
「結果」
「絶対に考えないように」と指示されたCグループが、最も映像について詳しく覚えていた
参考
ふむ、この実験の結果を皮肉過程理論に沿って説明するなら以下のような流れになるでしょう。
シロクマについて考えないよう意識
↓
監視過程で監視するために実行過程でシロクマについて考える
↓
シロクマについて考えるたび、監視過程はシロクマについて考えたことをチェックする
↓
シロクマについて考えないようにと意識するほど、「考える事につながりそうなもの(例:動物園に行くと動物から「シロクマ」を連想する)」を排除しようとする
↓
結果的に、他の動物に比して高頻度でシロクマを思い出す
↓
忘れることが難しくなる
思い出さないようにと意識すればするほど、それを思い出すことにつながりそうな事を排除する必要が出てきて、結果的に何度も思い出すっていうジレンマなわけですな。
んー、何とも悩ましい、、、、。
不安から目を背けないことが重要だ
皮肉過程理論を踏まえると、「不安から目を背けようとすればするほど不安になる」という話になりますね。
これは中々に厳しい結論です。
不安から目を背けると不安になるといったところで、じゃあどうしたらいいんだって話になりますよねえ。
正直言って、「これをすれば絶対に不安と立ち向かえるようになる」といった方法はありません。
ただし、有効であろうといわれる方法は存在しています。
例えば、不安への対抗策には以下のようなものがあるでしょう。
- 完全抑制意図を弱化する
- 事象を体系化する
- 代替思考
- 受け入れて放っておく
以下順次捕捉します。
・完全抑制意図を弱化する
不安への対抗策の一つ目は完全抑制意図、つまり「絶対に~について考えない」のような思考を弱めることです。
完全抑制意図を弱めるためには、「ある対象について考えまいとすればするほ程対象について考えてしまうのだ」という予備知識を事前に得ておくことが有効だといいます。
つまり当記事の読者であるあなたは、もうすでに一つ目の不安への対抗策を行っていることになりますね。
・事象を体系化する
不安を呼び起こす記憶が複数ある場合、それらの一つ一つを思い出すのは多大な負担を要するためそれらをまとめて一つのストーリーにしてしまうという方法です。
抑制する思考の数が少なくなることで、抑制に伴う負担が減少します。
この方法はPTSDの治療等にも適応されている模様。
ただ、ちょっと個人で行うのはきついですねえ、、、。
・代替思考
Renaud and MacConnel(2002)によると、避けたい事象の代わりに自分のいい側面を考えると思考抑制が容易になるといいます。
また、自己概念が多様であるほど効率的であるそうです。
このような思考のことを代替思考と呼びます。
例えば、Macrae el al.(1998)によると、ステレオタイプが頭に浮かんだ際に平等主義などの信念を思い出すことで、それが代替思考として機能してステレオタイプ的な行動を抑制できる事が確認されたとか。
なので、例えば「これからプレゼンで緊張している」という場合には、あえてその緊張を「これは体がプレゼンに備えて準備をしている証拠だ」等ととらえなおすことで緊張を緩和するなんて方法もありだといえましょう。
中々日常の中で臨機応変に使いこなすのは難しい方法ですが、適切に使えればかなり効果的だと思います。
・受け入れて放っておく
上述の完全抑制意図の弱化の一種といえるかもしれませんが、不安である事を受け入れてその思考を放っておけるようになる事も有効な策といえます。
不安であることを受け入れてそれを放っておけるようになるには、アクセプト&コミットメントセラピーでいうところのアクセプタンスと脱フュージョンなどが有効になるといえるでしょう。
アクセプタンスや脱フュージョンについての詳細は以下の記事参照。
おわりに
この記事は「「思考抑制の皮肉効果」考えないようにするからこそ考えてしまうのさ」と題しておおくりしました。
考えないようにと意識すればするほどに、「その考えたくない事」は強く記憶に残っていくものです。
なので、不安にならないための最善の策はあえて不安から目を背けないことだと言えるでしょう。
なんだか、偉人の格言みたいな結論ですが割と当たっている気がしますねえ。
なるべく、不安から目を背けないで立ち向かっていきたいもんです。
では!
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/46/4/46_584/_pdf/-char/ja
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9A%AE%E8%82%89%E9%81%8E%E7%A8%8B%E7%90%86%E8%AB%96
https://psycnet.apa.org/record/2002-00269-008
https://psycnet.apa.org/record/1998-04011-001
参考記事等