今回は以下のような方に向けておおくりします。
・虐待の原因について考えてみたい人
・話しのネタが欲しい人等
オニギリス!
脱マンネリストで心理カウンセラーのオニギリです!
今回もよろしゅう!!
今回の話題は「児童虐待の原因を両親にばかり押し付けるのはいかかがなものか?」という話です。
あいもかわらず、世間では児童虐待のニュースが絶えません。
まあ、当たり前ですが、「なんだかなあ」って気分になるもの。
世論はもっぱら「虐待した親が悪い!」といった感じですけども、個人的には「親のせいにばかりするのも違うんじゃないかなあ」って気もするんですね。
もちろん、虐待なんてしでかすのはどうあっても許容はできないですし虐待した親側に対する反感を感じるのは当然あるんですけども。
もそっと、親のせいにばかりせず広い視点から物事を見る必要もあるのではないかと思う次第。
ここで一瞬だけ宣伝?ですが、「悩みがあんよなー」て人も「ただ誰かに愚痴を言いたいねん!」て人も悩みが重症化する前に頭をクリアにしてみませんか?
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では、ゆるりとおおくりします。
目次
虐待には一体どんな種類があるのか?
平成26年度のおける児童相談所の児童虐待の相談対応件数は、平成11年度の児童虐待防止法施行前知比べて実に7.6倍に増加(88,931件)しており虐待死に関してはほとんどの年で50人を超えているといいます。
参考
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000108127_1.pdf
何とも複雑な気分になりますなあ。
そして、一言に虐待といったも虐待にはいろんな種類があります。
そこで、一度虐待の種類について確認してみましょう。
児童虐待防止法では、以上4つに該当するものを「虐待」と定めています。
・身体的虐待
・心理的虐待
・性的虐待
・養育の放棄(ネグレクト)
以下順次簡単に補足。
・身体的虐待
身体的虐待とは児童虐待防止法によると、「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること」です。
その具体例には以下のようなものがあります。
- 殴る
- 蹴る
- 投げ落とす
- 激しく揺さぶる
- やけどを負わせる
- 溺れさせる
- 首を絞める
- 、、、など
・心理的虐待
心理的虐待とは児童虐待防止法によると、「児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」です。
その具体例には以下のようなものがあります。
言葉による脅し
無視
きょうだい間のおける差別的扱い
子どもの目の前で家族に対し暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)
、、、など
・性的虐待
性的虐待とは児童虐待防止法によると、「児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわい
せつな行為をさせること」です。
その具体例には以下のようなものがあります。
- 子どもへの性的行為
- 性的行為を見せる
- ポルノグラフィの被写体にする
、、、など
養育の放棄(ネグレクト)
ネグレクトとは児童虐待防止法によると、「保護者としての監護を著しく怠ること」です。
その具体例には以下のようなものがあります。
- 家に閉じ込める
- 食事を与えない
- ひどく不潔にする
- 自動車の中に放置する
- 重い病気にかかっても病院に連れて行かない
、、、など
虐待は無茶苦茶有害
一般的な認識通り、虐待は非常に有害です。
虐待による害として、心理学的に一般的なのは以前当ブログにて取り上げた愛着障害でしょう。
愛着障害とは、「養育者との愛着が適切に形成されない事で、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態」の事です。
※主に虐待や養育者との離別が原因とされる。
愛着の形成が上手くいかないと、以下のような事が起こるといいます。
・傷つきやすくなる
・白か黒かと極端な考えをしやすくなる
・人と丁度いい距離感をとることができない
・恋人、配偶者、自分の子供などをどう愛していいかわからない
人間関係を築いていく際にかなり苦労しそうな感じです。
それに精神的に不安定になってしまうのもかなり問題。
被虐待児の心理についてより詳しくは以下参照。
さらに、脳科学的な側面からは以下のような害が分かっているそうな。
・暴言虐待による害:スピーチや言語,コミュニケーションに重要な役割を果たす大脳皮質側頭葉の「聴覚野」の一部の容積が増加(聴覚に障害が生じたり知能や理解力の発達にも悪影響が生じることがあるとの報告がある)
・厳しい体罰による害:感情や思考の制御、犯罪抑制力に関わる部分、集中力・意思決定・共感などに関わる部分、物事を認知する働きをもつ部分の容積減少がみられた
・両親のDV 目撃による害:視覚野(ブロードマン18野:舌状回)の容積が減少(DV目撃でさまざまなトラウマ反応が生じやすくなり知能や語彙理解力にも影響があることが知られているという)
※DV 目撃による害が一番でやすい時期は、11~13歳頃だという。
脳科学的な立場からの害についてより詳しくは以下参照。
虐待は受け継がれる??ってマジ?
虐待に関して、よく言われることとして「虐待は受け継がれていく」というものがあります。
つまり、「虐待をされて育った人は親になったら自分の子供に虐待をする」という事ですな。
これは「虐待の世代間連鎖」といわれるものです。
なんとも、胸くそな感じの話ですが、何ら根拠のないデマというわけでもないんですね。
例えば虐待の世代間伝達に関しては、2006年に発表されたCicchettiさんらによる以下の研究があります。
この研究の対象は、一歳児に対し不適切な養育(身体的・心理的虐待,情緒的ネグレクト, 身体的ネグレクト,性的虐待)が認められる母親 137名とそうではない統制群の母親52名。
不適切養育群の母親は、子供時代に統制群の母親よりも自身も実親から不適切な養育を受けていたことが有意に多かったといいます。
また不適切養育群の母親たちは「自身の子供時代の実母」に対して、「拒否されて放っておかれた」とか「拒否されて脅威的だった」等というイメージを持っており、さらに現在の実母との関係についても「怒りの感情を強く持っている」という事が分かったそうです。
参考
Developmental psychopathology: Theory and method, Vol. 1, 2nd ed
このCicchettiさんらの研究以外にも,「被虐待児などの愛着外傷を抱える人達が,のちに虐待親になっていく」という虐待の世代間連鎖の比率の高さに関する研究は数多く報告されていると言います。
ただ、これはあくまでも傾向の話であって、「ひどい虐待を受けて育ったが自分の子供には全く虐待をしないという母親」も実際に存在します。
ちなみに、ひどい虐待を経験したが自身の子供に非常に愛情深く接している方をわたしも現に知っていますしね。
傾向と言うだけで「全てではありません」。
虐待の連鎖を断ち切るために出来る事とは何なのか?
さて、最後に虐待の原因とそれらを踏まえて「どうしたら虐待を防止できるのか」についても考えてみたいと思います。
虐待の発生をすべて先ほどのような世代間伝達によって説明しようとすると、あまりにも親に責任をおっかぶせすぎな気がしますよね。
実際、問題はそんなに単純ではありません。
虐待が発生する背景には、様々な要因が絡まりあっているものです。
という事で、虐待の発生に関して精神疾患の原因を考える上で一般的に用いられている生物心理社会モデルに基づいて考えてみましょう。
※生物心理社会モデルとは、精神疾患に関する要因を生物学的要因、心理学的要因、社会的要因の三つに分類する考え方のことである。
生物心理社会モデルに基づいた場合、虐待の原因には以下のようなものがありこれらが単一ないし複合的に重なって虐待が起こると考えられます。
・養育者側に何らかの精神疾患等がある
・子供側に発達障害等の問題がある
・両親のおかれている環境に問題がある
・社会における人とのつながりの中でもたらされる精神的ないし物質的支援(ソーシャルサポート)の不足や欠如
以下順次簡単に補足です。
・養育者側に何らかの精神疾患や日常生活に支障をきたすような疾患等がある(養育者側の生物学的・心理的要因)
虐待の世代間伝達は、原因としてはここに分類できますね。
養育者側に精神疾患や日常生活を送るうえで強いストレスを感じるような慢性的な疾患や事故等による後遺症などがある場合、子育てに十分な労力を使うことができない可能性があります。
言ってみれば、「自分の面倒を見るだけで精いっぱい」なので望まざるともネグレクト気味になってしまったり情緒が不安定になって子供と良好な人間関係を育めなくなってしまう事もあるという事ですね。
実際、子供はまるで大人の言うとおりになんてう動いてくれませんから、特に疾患等を持っていない人にとっても相当なストレスを感じるもの。
ストレス過大で望まざる虐待をしている人もいる可能性があります。
・子供側に発達障害等の問題がある(子供側の生物学的要因および両親側の心理的要因)
子供は基本的に非常に手のかかる存在です。
まして自閉症やADHDといった発達障害があるとなれば、それに拍車がかかる可能性はあります。
例えば、ADHDの子供の中には、忘れ物が多いとかルールが守れないという子がいます。
これはいかんともしがたい事であり本人に責任はないのですが、両親からすると「子供自身の怠慢や努力不足」に見えることもしばしばです
初めのうちは「しょうがない奴だ」くらいですんでいるでしょうが、次第に「どうしてこんなに何度注意しても直らないのか!」等と段々イライラが募って過剰なしつけを行いそれが虐待につながってしまうという事が考えられます。
・両親や子供のおかれている環境に問題がある(社会的要因)
両親が置かれている環境によっても虐待は誘発されえます。
例えばそのような環境の例としては、経済的に困窮しているとか家庭内でDVが蔓延している、離婚問題により強いストレスにさらされている等といったものが考えられるでしょう。
特に経済的困窮に関しては、数あるストレスの中でも特に重大なものであるとの研究があるため非常に深刻だと思われます。
・社会における人とのつながりの中でもたらされる精神的ないし物質的支援(ソーシャルサポート)の不足や欠如(社会的要因)
社会から孤立する事で精神的に追い詰められてしまい、それが虐待を引き起こすことは十分あり得ます。
例えば、子育てをしたことがない人がいきなり子育てをしようと思って子供と向き合っても何をどうしたらいいのかわからず困惑してしまうでしょう。
この際、過大なストレスから虐待に至ってしまうケースもあります。
また周囲に頼る人がいない場合、「かつて自分がどう育てられたか」という記憶をたよりにして自分の子供のしつけ等を行おうとする育児初心者もいるでしょう。
もしこの際、自分が虐待を受けていた場合には、かつて自分がされた方法でしつけ等を行おうとして結果として虐待を引き起こしてしまいます。
周囲からの適切なサポートがあれば、経験者や専門家等から正しい子育ての方法を教えてもらったり育児のストレスを緩和してもらう支援が受けられるので、虐待に至る確率はかなり減らせるはずです。
よって、児童虐待を減少させるためには、「手厚いソーシャルサポート」が非常に有効と言えるでしょう。
何といっても、「社会からの孤立」が問題を非常に深刻にします。
事実、1988年のEgelandさんらの研究によれば、虐待の連鎖を断ち切ることができたケースの共通点には、
「子供時代のある時点において虐待親に代わる愛情や支援を提供してくれる存在(恋人、夫、心理セラピスト等)がいた」
というものがあるそうです。
参考
Breaking the cycle of abuse: Implications for prediction and intervention.
また2004年のMilanさんらのでマイノリティ地域にすむ低所得者層、かつ子供時代に親や家族からの身体的虐待経験のある10代の妊婦(平均17.4 歳)を対象とした研究では、妊婦たちの不遇な養育体験が生まれてきた乳児と関係する程度は以下の2つに関係があるといいます。
現在の実母(またはそれに代わる叔母や祖母)との関係をどう受止めているのか(要するに信頼や情愛など程度の事)
自分 が母親である(になる)ことに関連する感情の質
この研究では、もし妊婦が過去に虐待経験を有していても強く信頼できる人物がいたり自分が母親になることに対して前向きになれているなら、
「乳児との関係にストレスを大して感じる事なく被虐体験が自身の養育行動に直接的に否定的影響を及ぼすことはなかった」
といいます。
実際、この研究ではさほどのストレスは感じず自身の虐待経験が乳児との関係に影を落とす可能性
つまり、ソーシャルサポートが虐待を未然に防ぐことにいかに重要かという話です。
事実、ソーシャルサポートと虐待の関係については他にも2009年のBriere さんと Jordanさんによる研究があります。
この研究では、虐待の世代間連鎖をより促進する要因として以下を強調している模様。
貧困や社会的不利(差別等)によって社会的サポートが得られないこと
ハイリスク家庭が地域社会からの 暴力 や隣人・仲間からの攻撃、排除にさらされる事
やはり、社会からの孤立が虐待を加速させる強力な要因であるといえましょう。
となると、やはり重要なのは行政等を中心としたソーシャルサポートの積極的な提供が欠かせないという事になると思います。
おわりに
この記事は「児童虐待の原因を両親にばかり押し付けるのはいかかがなものか?」と題しておおくりしました。
児童虐待の原因には、様々なものが考えられるためその原因を両親にばかり押し付けるのはちと酷です。
確かに、「おめえのせいだろそれ?ああん?」て感じの事案も沢山ある気がしますけども、それでもそこに至った経過はきちんと加味しないとねって感じでしょう。
ソーシャルサポートが充実していれば、未然に防げた悲劇も沢山あるでしょうしねえ。
ただ、ソーシャルサポートが大事と言っても、それを民間の人達に強制することはもちろん強くすべきとは言えないですよね。
民間の人にはそれぞれの都合があるものです。
確かに「周囲が気にかけてあげる」のが理想ですが、中々そううまくはいかないでしょう。
そうなると、やはりソーシャルサポートの主軸は公的機関等って話になるかと。
直接手は貸せないとしても、虐待が起こっていそうな事案を見かたら、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」に連絡するくらいの事はしてもいいでしょう。
自分に負担のない範囲で行動していきたいところです。
では!
参考
Breaking the cycle of abuse: Implications for prediction and intervention.
Breaking the cycle of abuse: Implications for prediction and intervention.
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19249404.pdf