「人間の感覚って不思議だね。最近、聴いたんだけど幻肢とかいう現象があるらしいね。不慮の事故とかで手足を失った人が失ったはずの手足に痛みを感じているように感じるって現象らしい、、、。もう、その痛みを感じている手足はないはずなのに、なぜ痛みを感じるんだろ??本当、人間の感覚って不思議だなあ。」
うん、そうよな。
確かにないはずの手足から痛みを感じてるってちょっと何が起こっているんだかよう分からんよな。
オニギリス!
脱マンネリストのオニギリです!
今回もよろしゅう!!
今回の話題は「「ラバーハンド錯覚」自分の身体のイメージと自分の身体が常に一致しているとは限らない?」という話です。
今回は以下のような方に向けておおくりします。
- 人間の感覚の不思議について探求してみたい人
- 人間の少し変わった面白い心理現象について知りたい人
- トリビアを探して暇つぶしをしたい人
人間の感覚には触覚や味覚、視覚、嗅覚、、、といろいろなものが存在しています。
ただ、これらの感覚は決して完全なものではなく結構盲点を持っており、錯覚がおこることがあります。
今回取り上げるラバーハンドイリュージョンというある種の錯覚もそのような不思議を表すものといっていいでしょう。
少し人間の感覚の不思議を探求してみやしょう。
では、ゆるりとおおくりします。
目次
ラバーハンドイリュージョン(RHI)って何?
ラバーハンドイリュージョンとは大雑把にいうと、
「ゴムでできた手がさわられているのを自分自身の手が触られているように感じる錯覚現象」
のことです。
ん?
意味が分からん?
すんません、実はこの現象はある実験に基づくものなのです。
その実験の概要というのが以下。
- 参加者自身の手(以下リアルハンド)とゴムの手(以下ラバーハンド)を机の上に並べて置いて、リアルハンドが見えないように仕切りを立てる
- 参加者がラバーハンドを観察している際、リアルハンドとラバーハンドをできるだけ同時に撫でたり触ったりする
この結果、被験者たちはリアルハンドが触られたりしていないにもかかわらず、空間的にラバーハンドの位置から触れられていると感じるんですね。
まあ、言葉で説明してもわかりにくいと思うのでユーチューブから参考になりそうな動画探してきたんで参考まで見てみてくださいな。
参考動画
また、視覚刺激だけでもラバーハンドイリュージョンが起こることが実験により確認されているとも言いますね。
Durgin et al. (2007)では、 220人の参加者を対象にラバーハンドにレーザーライトを当て,それを見続けさせるという実験を行いました。
その結果,なんと約66%の参加者がリアルハンドに触知覚を感じると報告したそうです。
なお、このような現象が起こるメカニズムについてはRHI生起前後の脳活動をfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)で測定して、RHIにおける身体部分の自己所有感(ある事象が自身の身体で生じてる感覚)について検討した研究があります。
その研究によると、脳の前運動皮質の活動は観察している腕の自己所有感を反映し,自己帰属の根本的なメカニズムであると考えられているそうです。
※前運動皮質とは脳の前頭葉の前側の領域。前運動皮質の機能について詳しくはこちら。
参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E5%89%8D%E7%9A%AE%E8%B3%AA
そして、RHIの生起には個人差があり、例えば統合失調症患者は健常者に比べてよりRHIを感じやすいなんていわれているそう。
また、バーハンドイリュージョンの主な測定方法としては以下のようなものがあるといいます。
- 内観報告(被験者に質問票に回答してもらう)
- 心理物理学的手法(隠れたリアルハンドの主観的位置の移動をRHI の生起前後で比較)
- 皮膚電位反射(発汗による皮膚の電気抵抗値を測定)
- 脳イメージング手法(主にfMRI を用いてRHI生起に関わる脳内部位の特定)
ラバーハンドイリュージョンの測定においてはこれらの手法を複合的に駆使して行う模様。
まあ、測定方法はちょいと余談でしたね。
仮想現実体験はRHIの発展版?
RHIについてここまで見てきましたが、勘のいいあなたはもしかしたらRHIからバーチャルリアリティ、いわゆるVRのことを想像したかもしれません(そんなことない?)。
VR体験だって仮想世界内に自分の身体をアバターとして投影しているのですから、RHIのような錯覚が起こってもおかしくない気がしてきます。
※アバターとは仮想空間内での自分の分身。
実は、Sanchez-Vives et al. (2010)では、ヘッドマントディスプレイ(HMD)を使って、RHIをVR環境により再現してたりするんですね。
この研究によると、自分自身がVR空間内でアバターとして過ごしていると自分とは直接つながっていないアバターに対する刺激があたかも自分の本当の体に来たかのように感じるといいます。
この結果は、RHIが体の一部分の所有観に対する錯覚であったのに対して、身体全体の所有観に対しても同様の錯覚が起こるということを示唆しているといえるわけです。
この結果は今後やってくるであろうVR社会への大いなる参考資料となるでしょうな。
「自分の身体」は必ずしも「物理的な自分の身体」とは限らない?
そもそも、ある身体を「自分自身のもの」として意識する時に自己身体が成立するのです。
しかしRHIという現象をみるに、必ずしも自己の身体のイメージが物理的な自己の身体とは一致しておらず、客観的に自己の身体をとらえることが難しいということが分かります。
なお、近年の身体哲学で注目される考え方に「拡張した心」というものがある模様。
この考えは「心というものは体の内側だけではなく外部の環境も含む全体としてのシステムで成立しているので、脳だけにあるのではない」ということを示唆しているんですな。
RHIという現象は「心というもののありかはどこなのか?」なんて話にまでつながっていくのです。
なんか、すごくないっすか?
おわりに
この記事は「「ラバーハンド錯覚」自分の身体のイメージと自分の身体が常に一致しているとは限らない?」と題しておおくりしました。
ラバーハンドイリュージョン(RHI)とは雑な言い方をすると、「ゴムでできた手がさわられているのを自分自身の手が触られているように感じる錯覚現象」のこと。
このRHIは、わたしたちに「自分の身体に対するイメージが必ずしも物理的な身体と一致するとは限らない」ということを示唆しています。
人の心って本当に不思議なものです。
これからも研究が進行するにつれて、心に関してのさらなる不思議な発見が見いだされるでしょう。
楽しみであります。
では!
参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/17/4/17_4_761/_pdf
参考記事等