「今回の試験はしっかりと一応勉強したんだけど、なんか試験の日の朝にいやあな予感というか試験が難しくてできない気がしたんだ。で、実際受けてみたら本当に難問で手も足も出なかったわ。マジ最悪。」
ふむ、まあそんなこともあるかもしれない。
オニギリス!
脱マンネリストで心理カウンセラーのおにぎりです。
今回もよろしゅう!!
今回の話題は「「予言の自己成就(行動的確証の過程)」根拠がない思い込みもおこりそうだと思っていると起こってしまう」という話です。
今回は以下のような方に向けておおくりします。
・予言の自己成就について知りたい人
・話のネタが欲しい人等
「あー、なんか起こりそうだよなあ、、、」等とよくない事を想像していたら、実際に起こってしまったなんて経験はないでしょうか?
全く何の客観的根拠に基づいてもいない単なる思い込みによる予想であっても、それが現実になってしまうことはあるものです。
なんだかあの有名な自己啓発本「思考は現実化する」みたいな感じの現象ですねえ。
なので、もちろん場合にもよるもののあまりネガティブな事ばかりを考えない方がいいかもしれません。
特に朝からその調子だとその日は本当に嫌なことが起こる一日になるかもしれません。
では、ゆるりとおおくりします。
目次
予言の自己成就とは?
予言の自己成就とは、社会心理学者のマートンさんによって名付けられた概念であり、
「何らかの予期が何の客観的根拠にも基づかない思い込みに基づくものであっても、意識的ないし非意識的にその予期を実現するような行動をとることによりその予期が現実になること」
をいいます。
参考
Social theory and social structure, Rev. ed.
なお、社会心理学において「予言の自己成就」は「行動的確証の過程」と呼ばれることもあり、これまで多くの研究の対象となってきました。
その研究の中で有名なものには、スナイダーさん達による実験があります。
この実験の概要は以下の通り。
- 互いに未知の仲である男女の大学生一名ずつを、マイクとヘッドフォンを通じたコミュニケーションを行う状況におく
- この際、相手女性の顔写真であると称し半数の男性被験者達には事前調査により特に容姿の評価が高かった女性の写真を手渡し、もう半数には容姿の評価が低かった女性の写真を手渡した
- その後10分の会話を録音し、女性側の発言部分だけを多数の評定者に聞いてもらいその印象をたずねる
※評定者は会話に参加していない別の男性達である。
その結果、
「男性側が美人であると信じた女性達の方が、そうでない場合に比して社交的で社会的スキルに優れたバランスの取れた性格である」
と評価されたといいます。
相手が美人であると思い込んだ男性が相手女性の内面を高く評価するのは、まあ割とありがちな傾向でしょう。
しかし女性が美人かどうかなどといった情報をもっていない第三者的立場にある男性達が、「美人であると思われていた女性の内面」の方を高く評価したのは少し不思議ですね。
おそらくこれは男性の友好的な態度が女性の魅力を引き出したが故の結果なのかもしれません。
参考
Social perception and interpersonal behavior: On the self-fulfilling nature of social stereotypes.
予言の自己成就は差別や偏見でも起こりうる
予言の自己成就が人種や性別に関する偏見に対しても生じることが確認されています。
ワードさんらによる模擬就職面接の場面を用いた実験では、偏見がもとになって生じる知覚者側の行動が結果としてその偏見を証明するような事実をもたらす事が示唆されているんですね。
参考
The nonverbal mediation of self-fulfilling prophecies in interracial interaction
この実験は2つに分かれています。
実験1では、黒人受験者が白人面接官から示される疎遠な態度(着席位置を遠ざける等)の特徴と白人受験者に対する親密な態度の特徴が明らかにされました。
そして実験2では、実験1での2種類のどちらかで振舞うよう訓練された面接官に白人受験者を面接させたんですね。
すると黒人受験者に対する疎遠な態度と同様の態度を面接官がとった場合、例え白人受験者であってもあたかも「能力の低い黒人」のイメージ生き写しのごとく失敗を繰り返してしまったといいます。
要するに、偏見に基づいた面接官の対応が受験者の失敗と成功を左右しているという事です。
実際の面接現場では、黒人受験者はおそらくこの実験での場合と同様の扱いを受けるがゆえにうまく面接出来ないというハンデがもとより付与されている可能性があるというわけですな。
自分のおかれている地位により予言の自己成就のおこりやすさが変わるかもしれない
また、予言の自己成就は各人のおかれた立場といったものによっても影響を受けるといいます。
例えば、実験状況において参加者達を地位の高い役割と低い役割に振り分けた場合、高地位側に与えられた期待は自己成就するのに対して低地位側の期待は自己成就しないそうな。
この具体例としては、教師期待効果(ピグマリオン効果、ローゼンタール効果とも)があるでしょう。
教師期待効果とは、教師が生徒の能力について期待を持つと実際に生徒の能力が自己成就、つまり向上するというものです。
この自己成就には「教師ー生徒」という地位関係が影響を及ぼしている可能性があります。
低地位に置かれたものは高地位者に従う行動が増えるでしょうし、この行動は「高地位につくための資質を欠いている」といった期待を確証してしまうものでもあるんですね。
低地位にある者が実力を発揮して地位を向上させるには元々ハンデがあるといえます。
とはいえ、高地位にある側も行動的確証を起こすかもしれない立場に自分があると自覚するとその危険性について気を遣うので少々気づまりを覚え複雑な心境になったりするんですね。
つまり具体的に言うと、「差別的な振る舞いをしない様に気を遣ってしまって疲れる」という事です。
しかしこれには思わぬ側面がある可能性がある研究によって示唆されています。
参考
それが「偏見の弱い人ほど気を遣うがあまり態度がよそよそしくなる」という事。
つまり表面的な行動だけ観察すると、偏見の弱い人は偏見の強い人と結局同じような回避傾向を示しているというなんともいえない皮肉な事態が起こっているというわけです。
いやあ、難しいもんだわ。
おわりに
この記事は「「予言の自己成就」根拠がない思い込みもおこりそうだと思っていると起こってしまう」と題しておおくりしました。
予言の自己成就とは、
「何らかの予期が何の客観的根拠にも基づかない思い込みに基づくものであっても、意識的ないし非意識的にその予期を実現するような行動をとることによりその予期が現実になること」
でしたね。
何も客観的な根拠がない思い込みによって、人間はかなり行動を左右されてしまうという事がよくわかってもらえたかと思います。
だからこそ言われなき偏見や差別意識といったものは恐ろしいってことですな。
なので、まずは「本当はどうなのか」といった偏見や差別の対象となっている集団や属性に対する理解を深めること必要という事でしょう。
ただ理解を深めたからこそ「わたしはアイツらを許せん」とか言い出す人もいないとは言えないので、そこが難しいよなって最近思いますなあ。
その場合は、もうすみ分けて関わらないようにするしかないでしょうな。
それが現実的かなあ、、、敵意持っている人と持たれている人を同じ場所にいたら、何が起こるか分かったもんじゃないですからね。
では!
参考記事等
「意識高い人は疲れる」自己啓発で変に選民思想をこじらせたらアカン!
参考
Social theory and social structure, Rev. ed.
The nonverbal mediation of self-fulfilling prophecies in interracial interaction