「インセンティブを与えると人ってやる気になるっていうよね。だから、歩合制ていうのがあるんだわな。うん。でも、最近になって出来高制でやる気が上がるのには限界があるっていう話をきいたわ。マジ?」
うん、そうね。
お金さえ出せば人はやる気になるっていうのは「いつどんな時でも通用すること」ではなかったんだよねえ。
オニギリス!
脱マンネリストのオニギリです!
今回もよろしゅう!!
今回の話題は「インセンティブで人がやる気を出すには限界がある」という話です。
今回は以下のような人に向けておおくりします。
- インセンティブの効果について深く知りたい人
- インセンティブでやる気が上がる効果の限界について知りたい人
このタイトルを見て「そなアホなウソ言うたらあかんん!」と怒り心頭な人もいるでしょう。
はい、確かに基本的にはインセンティブで人がやる気を出すというは間違っていないんです。
しかし、場合によってはインセンティブが逆効果になることもあるんです。
これはビジネスに限ったことではなくどんな領域においてもそう。
なお、この記事はクラウディア=ハモンドさん著『お金に支配されない13の真実」を参考にしています。
では、ゆるりとおおくりします。
目次
インセンティブとは何なのかまず確認
まず、インセンティブという言葉の意味について確認しておきましょう。
英語のincentetiveという単語は「刺激、動機、誘因」等と訳されますが、一般に言うところのインセンティブとは、「ご褒美」のことです。
また、ビジネスの現場ではノルマ達成ないしそれ以上の成績を収めた場合に与えられる「報償」の意味合いで使われるのが一般的です。
※報奨金とは主に会社側で定められた目標を達した際、基本となる給与とは別に支払われるもの。
インセンティブは被雇用者のやる気を促進するための制度なんですね。
ちなみに、モチベーションもインセンティブも英語単語としてはどちらも「動機」と訳せますが、その意味合いは違います。
詳しく言うと、モチベーションは内発的動機でありインセンティブは外発的動機のことを意味しているんですね。
内発的動機とはいわゆる「やりがい」等の様な自分の内側から生じる動機のこと。
一方の外発的動機とは自分の外側からの働きかけによって生じる動機のことですねえ。
経済学で言うところのインセンティブは別物
これまた少し余談ではありますが、経済学で言うところのインセンティブは少しニュアンスが違いますね。
経済的な意味でのインセンティブは主に「誘因」、それもコストと利益を考えあわせたときに人の行動を変化させる誘因のことを指します。
インセンティブには人間の欲望を刺激、またはある行動の要因になる、さらにはその逆に「ある行動を抑制する」効果があるといいます。
経済学では悪い評判がたったら困るから人に不親切にしないとか、お金がたくさんもらえるから仕事を頑張るといったことにはインセンティブがかかわっているとみるんですね。
参考
金銭的インセンティブの限界
金銭的インセンティブには限界があるといいます。
金銭的インセンティブの威力の大きさを示す実験には例えば1950年代、当時ハーバード大学医学部大学院に勤務していたロバート=s=シュワブさんによるものがあります。
この実験でシュワブさんは人間が棒を握ってぶら下がる能力について調べています。
人が手首の屈筋の痛みに耐えられず手を放すまでの平均的な時間は5.0秒であると当時分かったいました。
そこでシュワブさんは被験者たちに「がんばれ!」との声援を送り、さらには催眠術を使い励まそうとしたといいます。
その結果、平均ぶら下がり時間は75秒に伸びたそうです。
そして、今度はシュワブさんは被験者たちに5ドル札を見せつつ「過去2回の成績を上回ったらこれをあげます」との旨を伝えたらたちまちのうちに被験者たちのぶら下がり時間は2分間にまで延長されたといいます。
こう見ると、金銭的インセンティブってすごい効果ですね、、、。
事実、これまで金銭的インセンティブの有効性をしめす大量の研究が行われてきました。
しかし、それとは逆に金銭的インセンティブの限界を示す研究も存在します。
その研究による重要な結論は以下のようなものです。
『極端な単純作業は別として、多くの仕事では出来高や質に応じ個人の報酬の増加が約束されている場合には人は報酬につながらない努力はしようとしなくなる』。
つまり、例えばサービス業であれば自分の報酬が増えない任意の顧客への心遣いは一切しなくなるということ(例えば、愛想が悪くても人事考課に無関係なら愛想が悪くなるってこと)。
まあ、早い話「利にならないことはしない」という意識が強まるということですな。
ちなみに、お金のことばかり考えていると性格が悪くなるなんて話もあったりします。
詳しくは以下からどうぞ。
成績に応じてお金をあげたら学力は伸びる?
『成績高払いでは学力は伸びません』
最近、アメリカでは学校成績を向上させるために実施された一連の実験がありました。
このプロジェクトは3万6千人の子供に総額940万ドル(日本円で10億3戦百万円)が支払われるほどの大規模なものであり、ハーバード大学の経済学者ローランド=フライヤーさんにより指揮されました。
このプロジェクトは2007年秋にまずニューヨーク、ダラス、シカゴの3都市で開始され、後にワシントンやヒューストンが続きました。
この実験では以下のようなことが示唆されています。
- 課題が明確かつ具体的で努力でどうにかなる場合テストの成績が上がる
- 成績高でお金を出すと成績は上がらない、さらには下がる可能性もある
実は、一般的に内的動機は一時的であるということが言われていますしねえ、、、。
まあ、この実験でもその事実を裏付けているといえますね。
この実験から、もし教育の現場で金銭インセンティブを応用しようと思うのであれば、「具体的で努力次第で達成できることにお金を払う」といいでしょう。
例えば、「この本を読んだらお金をあげるね」とかってやつですね。
人は汗水たらして稼いだお金に価値を感じる
『人は苦労して稼いだお金に何より価値を感じるものです』
時に「このような類のお金」が薬物依存からの脱却に役立つことがあるといいます。
お金で薬物依存が治るというと、「??」て感じになる人も多いかと思いますが、事実です。
上述のクラウディア=ハモンドさん著の「お金に支配されない13の真実」の中に示されている例に以下のようなものがあるんですね。
それはコカインに依存していた広告業界の人の話です。
この方は高給取りであるにもかかわらず、コカインを買うために多額の借金があり、一時期専門家の助力もあってコカインから離れることができても、すぐにまたコカインに戻ってきてしまったという人です。
ある時、この方はある支援プランを提案されます。
そのプランの概要以下の通りです。
- 参加者は実践と心理の両面からアドバイスをもらう
- 週に3回クリニックに通い尿検査を受ける
- 検査の結果、コカインの使用がないと証明されれば2ポンドが支給される(支給金はクリニックが代わりに保管する)
- 6か月たったら支給金を自由に使っていいが、その使用対象は人生の次の段階に進むのに役立つものに限られる
このプログラムを受けた上記の方は受講を希望する遠隔教育コースの教科書を買うために貯金をしたそうです。
この結果、彼は6か月たってもコカインとは縁を切ったままだったといいます。
その方の発言によると「成功のカギは現金であった」といっているそうですねえ。
上記のようにこの方はもともと高所得なので支給額は大した額だと感じないはずですよね。
事実、この方が手にしたお金は週に6ポンドで月に24ポンド、総額でも144ポンドでした。
なのに、カギは「現金である」と言っているわけです。
まあ、全ての依存症に対して効果があるとは言えませんが、「苦労して稼ぐお金」にはこんな効果もある可能性があるということですね。
多額の報酬は大きなプレッシャーである
今回参考にしている書籍「お金に支配されない13の真実」によると、「大きな報酬額は大きなプレッシャーとなり、人のやる気をそぐ可能性がある」とのことです。
ここでいう「大きな報酬額」というのは「人生や生活を一変させてしまうほどの金額」のことであり、数十万円程度の額ではありません。
言ってみれば、宝くじの一等にあるような「1億」とか「3億」、場合によっては「20億」とかといった金額でしょう。
このような金額を提示されると、人はあがってしまうといいます。
人は大きな金額を提示されると大きなプレッシャーを感じ、思考が自動操縦モードから意識モードに切り替わるんですね。
そうすると、人は何かにつけて考えすぎになり、結果として単純なことですらできなくなってしまうとのこと。
一般には金銭的インセンティブの額が多ければ多いほど人のやる気は高まると思われがちですが、実は金額が大きすぎると逆効果になったりするんですねえ。
非常に興味深い話です。
おわりに
この記事では「インセンティブで人がやる気を出すには限界がある」と題しておおくりしました。
世間一般的に言われるインセンティブとは金銭的なものであり、それによってやる気が引き出されることも十分にあり得ます。
しかし、金銭的インセンティブには金額が大きすぎるとかえってやる気をそぐ等といった限界があり、特に教育に導入するにはかなりの注意を要するものです。
もし、「試験でいい点とったらお小遣いを値上げしてあげる」といった教育方針を取っている親御さんがいましたら、成績高でお金をあげるのではなく「もっと、具体的かつ明確で努力すればできる課題」に対してお金を出しましょう。
やはり、内的動機も大事ですね。
インセンティブも使いよう!
参考記事等